本研究では,立論において必要になる理由想定のメカニズムを明らかにし,多面的な理由想定の支援方法について検討した。まず,最初に想定した初出理由がその後の理由想定の範囲を制限し,理由想定の多面性を抑制する可能性が示された。さらに,この傾向は学習者自身が想定した初出理由だけでなく,他者が与えた初出理由でも生起することが明らかになった。また,自己欺瞞や印象操作といったパーソナリティ要因が理由提示の傾向と関連していることが示された。これらの関連は理由想定では認められなかったことから,理由提示の段階に特徴的なバイアスが理由の多面性を阻害しており,それは自己評価と関連している可能性が示された。
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