研究課題/領域番号 |
16H07269
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
田中 理恵子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (50779105)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 芸術人類学 / 音楽 / キューバ / 民族誌的研究 / 生の政治 |
研究実績の概要 |
本研究は、旧来の人類学・音楽学における「民族=領土=文化」の図式に当てはまらない特異なキューバの芸術音楽を対象として、とくに今日の社会変容期キューバにおける芸術音楽祭を焦点に、その音楽に関する創造、観賞、政策といった行動様式がいかに変化するのかを明らかにしようとする民族誌的研究である。具体的には、ハバナで開催される国際音楽祭「キューバ・ディスコ」での調査を実施し、実証的データに基づく微視的な分析と考察を行った。 本研究で行った作業は質的観察とインタビューの手法を基軸とした。作業の内容は、①文献資料類の精査と分析、②調査先との折衝および第一次インタビュー調査、③現地フィールドワークおよび第二次インタビュー調査(約3週間)、④総括的民族誌の作成と成果還元、の四つに大別される。 まずは調査先(音楽委員会、芸術家協会、鑑賞経験のあるハバナ市民、ハバナ在住の芸術家3名)に対し、重点対象を優先しつつ調査受入の折衝を行った。平成29年度内の調査対象については、この段階で可能な限り折衝を終えて予定を組むことができた。同時に現地の動向を把握するために関係者とメールでのやりとりを頻繁に行った。その対象者としては、音楽委員会、芸術家協会、高等音楽教育機関のメンバーを選択したが、これは先の折衝のなかで、彼らが今日の政策決定および実践の主体として主要な役割を担っていることが浮き彫りになったためである。 上記の準備段階を経て、第一次インタビューを実施した。これは質的インタビュー調査を始める前の量的インタビュー調査に相当するものであり、行政機構に属する対象からの情報はメールでのやりとりにて摂取し、インターネット環境のよい場所に移動可能な音楽家からの情報はインターネット回線を利用した電話インタビューを実施した。これらの作業によって、芸術音楽祭をめぐる全体の俯瞰的構図を把握することに勤めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
なお折衝の結果、現地調査については平成29年度の実施としたことを付記しておく。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は現地調査を予定しているが、具体的には、国際芸術音楽祭が行われる国立芸術劇場でのフィールドワークと音楽祭を経験した芸術家や聴衆への個別インタビューを実施する予定である。 調査後は、研究期間を通じて連続的に行っている文献資料調査と併せてフィールドワークおよびインタビュー調査のデータを整理・分析した上で、今後に向けた民族誌の作成し、調査全体を総括する。民族誌の作成にあたっては、キューバ芸術音楽に関わる音楽家・研究者らとインターネットで連絡を取り合い、常にフィードバックを得ながら共同で執筆する。 民族誌の完成後は、調査対象および関係者に配布し、今回の研究全体に関するフィードバックを図ると同時に、調査対象を将来的にネットワーク化する企画(ワークショップ、シンポジウム、研究会等)に向けた折衝を実施する。
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