本研究は「文化(音楽)=民族=領土」という旧来の図式に当てはまらない、特異な「キューバ芸術音楽」を対象とした民族誌的研究である。とくに今日の社会変容期キューバにおける国際芸術音楽祭の実践に焦点を当て、音楽創造、観賞、政策などの行動様式がどのように変化するのか、その一端を明らかにした。この作業によって、旧来の音楽人類学および民族音楽学の分野においては未開社会の音楽を対象としてきたのに対し、本研究では今日の社会変容期を生き抜いていくための芸術音楽、すなわち生の政治としての音楽という新たな知見を得ることができた。
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