エジプト初期王朝時代における石製容器の製作技法・工程の復元と生産地の同定を容器表面に残る製作痕の観察から分析した。結果、トラバーチンや泥岩、凝灰岩といった各石材の性質・硬度に応じた技法が選択されていた。また器形・サイズについても製作時の破損リスク回避を考えたものであった。第2王朝には、回転工具の使用率が増加し、その技法に適した器形・サイズ・石材が選択されており、さらなる大量生産を指向した技法・工程の選択性へと変化する様相を捉えた。また、バダリ遺跡およびカウ遺跡資料との比較では、その製作痕に遺跡間で差異がないことから、メンフィス地域で集約生産されたのち、地方遺跡へ製品が流通されたものと考えた。
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