本研究の目的は、中国の商業紙が行う自己検閲を対象として、中国共産党が直面する独裁者のジレンマを解消するメカニズムを検証することである。商業紙が自己検閲によって党への批判をあいまいにすることで党へ情報を伝達する役割を果たすという命題を検証する。分析には中国の新聞記事テキストを対象にした分析を行う。計量テキスト分析の手法の一つである機械学習を使用する予定である。 本年度は主に以下の三点を中心に進展があった。(1)中国語の計量テキスト分析の手法を検討した。分析ツールであるPythonを用いて中国語の形態素分析が可能となった点に重要な成果があった。これによって、次年度以降に形態素分析の結果を元にした機械学習の実行に向けた取り組みを行うことが可能となった。(2)昨年度に引き続きデータの収集を中心に行った。中国の商業紙2紙を対象にキーワードを用い記事を収集した。(3)コーディング基準の設定を行った。記事分析に必要なコーディング基準を中国語母語話者との議論を経て検討した。自己検閲というあいまいな記述を抽出できるよう記事の分類に用いる基準を簡潔にし、さらにコーダー間の信頼性を担保できるよう、様々な可能性を検討した。 以上のように、平成29年度は中国の新聞を対象にした計量テキスト分析の可能性を検討することができた。しかし、自身の妊娠出産により研究を中断せざるを得なかった。そのため、今後はこの成果を元に分析を実行に移すとともに、引き続き中国の新聞を対象とした計量テキスト分析の可能性を検討したい。
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