平成30年度は主に二つの点で成果があった。 第一に、研究手法において進展があった。中国語の計量テキスト分析の手法として、Pythonの機械学習用ライブラリや、Rのパッケージを検討した。一方で、日本語のWindowsでは分析の過程で文字化けを起こしやすい問題など、引き続き課題に取り組む必要があることを確認した。以上の成果として、2018年10月20日に駒澤大学で行われた日本マス・コミュニケーション学会において「中国語ソーシャルメディアの分析手法-変化する中国メディアをどのようにとらえるか-」のタイトルで報告を行った。本ワークショップでは、データ収集や検閲など中国研究における特有の問題など、中国語の計量テキスト分析に関する議論を深めることができた。さらには、これまで中国語の計量テキスト分析を用いていない研究者と交流するきっかけになり、分野を越えて計量テキスト分析の応用可能性を議論することができた点で有意義なものとなった。 第二に、研究内容における進展である。中国において自己検閲を生み出すメカニズムの一つである新聞統制制度の変遷を明らかにした。具体的には、上海の商業紙がニュースサイトを設立した事例を対象に新聞統制制度の変遷や限界を指摘した。以上から、中国共産党が直面する独裁者のジレンマを解消するメカニズムを検討した。この成果として、2019年3月22日に公立小松大学の「高度情報化時代と国家の適応―中東と中国の事例から―」のワークショップにおいて、「中国におけるメディア統制制度の変遷―情報化による変化とその適応」のタイトルで報告を行った。本ワークショップはアラブと中国におけるメディア統制の共通点と差異を検討するなど、将来比較研究に発展するきっかけとなった点で意義があるものとなった。 以上の成果を共同研究や平成31年度採択の若手研究へとつなげていくことが今後の課題である。
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