研究課題/領域番号 |
16H07290
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
坊野 慎治 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (60778356)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 液晶 / ソフトマター / コレステリック液晶 / レーマン回転 / 異性体転移 / 光表面潤滑 |
研究実績の概要 |
等方相と共存しているコレステリック滴に温度勾配を印加するとトルクが発生し、キラリティーに応じた一方向回転が生じる。今年度は、生じるトルクを定量評価することを目的に、次の2点の研究を行った。 1、光表面潤滑によるアンカリング強度の制御 既存の系ではコレステリック滴が固体基板に接触している。このため、駆動されたトルクが、界面のアンカリングによって回転が阻害されてしまう。しかし、この界面における回転阻害は基板と液晶との複雑な相互作用により決まるため、定量的に評価することが困難である。そこで本研究では、界面の影響を取り除くために、基板をアゾベンゼンで被覆し、表面のアゾベンゼンをシス体に光異性化させた。その結果、紫外光を照射すると滴と基板の間に等方相が導入され、滴が基板から浮かび上がることが明らかになった。また、表面に導入した等方相により、コレステリック滴の回転が潤滑され、界面の影響を取り除くことができることがわかった。このため定常回転している滴の回転速度を測定することで、滴に加わっているトルクを定量評価することが可能になった。 2、異性体の物質流を用いたコレステリック液晶滴の回転駆動 バルクのコレステリック液晶にアゾベンゼン分子を混合した系において、コレステリック液晶滴に紫外光を照射すると、一方向回転が駆動されることを見出した。この回転を駆動するトルクを見積もったところ、温度勾配が駆動するトルクよりも、大きなトルクが駆動されていることが明らかになった。この光駆動回転のメカニズムを明らかにするために照射する紫外光の強度や加えるアゾベンゼン濃度に対して回転挙動を調べた。その結果、光照射により滴内部にアゾベンゼンの物質流が生じており、この物質流がトルクを駆動していることを示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は温度勾配下に置かれたコレステリック液晶滴に生じるトルクを定量評価することを目的として研究を行った。そして、問題であった界面の影響を光表面潤滑によって取り除くことに成功し、トルクの定量評価を実現した。また紫外光照射による新しい回転メカニズムを発見した。この方法で従来の温度勾配による手法よりも大きなトルクを駆動することに成功した。以上のように、トルクの定量評価と新規なメカニズムによる滴の回転駆動を達成しており、計画通りの発展である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、温度勾配により駆動されたコレステリック液晶滴回転から仕事を取り出すことを計画している。特にトルクの伝達機構や変換効率に着目して研究を遂行する予定である。また変換効率が低く仕事を取り出すことが難しい場合は、紫外光照射により大きなトルクを滴に駆動する。
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