研究課題/領域番号 |
16H07293
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
藤澤 信道 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (10778153)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 遠心圧縮機 / 旋回失速 / ディフューザ失速 / 過渡応答 / DES |
研究実績の概要 |
圧縮機を実際に運転する際、上記の不安定現象を避けるため、流量マージンを取り運転されている。そのため、不安定現象を制御し作動範囲を広げることで、より高性能な点で運転可能となる。しかし、不安定現象の制御方法は、未だ経験的な手法が多いのが現状である。そこで、本研究は不安定現象の抑制および制御手法を明確に提案するために、遠心圧縮機において、部分流量運転時に発生する旋回失速の発生構造を実機計測および数値解析の両面から調査したものである。特に、ディフューザに発生する旋回失速の構造解明およびケーシングの非対称性が旋回失速に与える影響調査を行った。 本年度は,遠心圧縮機全周を対象とした大規模DES解析の結果より、失速点に陥るとディフューザ案内羽根前縁部シュラウド側で発生する竜巻型の渦が、負圧面コーナー部で渦を誘起し、隣接翼へと干渉しながら旋回する大規模な渦構造が確認できた。以上の規則的な渦群の旋回が、ディフューザ失速の発生要因であることを明らかにした。また、規則的な渦群の中でも竜巻型の渦がディフューザ失速の初生の要因であることを示唆し、この渦の抑制が安定作動範囲を広げる可能性を示した。 さらに実機試験より、流量を減じると、案内羽根前縁部シュラウド側で旋回していたディフューザ失速がハブ側へと移行し、羽根車流路へと拡大し、段全体での失速へと陥る過渡現象を見出した。この現象を調査するため、新たに実機試験では流速測定孔を案内羽根入口に設け、流速の周方向多点計測を行った。また、ケーシング領域を含めた圧縮機全体の大規模数値解析コードを新たに作成し、解析を実施した。これらの調査より、ディフューザ失速が段全体へと拡大する間に、ケーシング舌部付近で案内羽根スロート部の渦がハブ側にて拡大することが実験および解析両面から明らかとなり、失速拡大の過渡現象の一要因であることを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数値解析においては、ケーシング領域を含めた大規模解析コードの開発に予想していたよりも時間が必要であったが、解析開始後は比較的順調にデータを取得できた。実機試験では、流速孔および圧力孔の追加加工が順調に進み、予定を上回るスピードでデータ取得が実行できた。 実験および数値解析の結果、当初の予想通り段全体の失速はディフューザ失速の拡大によるものであることが明らかとなり、特に舌部付近のディフューザ流路スロート部ハブ側で発達する渦構造が重要な役割を果たしていることが分かった。そこで、スパン方向での失速挙動の変化の初生箇所を同定するため、付け剥がし可能な薄型圧力センサを導入しディフューザ流路の任意の点での圧力変動の測定実験を新たに研究計画に加えた。 さらに、失速制御手法として噴流印加による積極制御に加え、案内羽根形状の修正を計画に加える。ディフューザ案内羽根形状の改善を行う。ディフューザ失速の初生には、流入角の変動によるディフューザ案内羽根前縁部シュラウド側で発生する竜巻型の渦の変動が大きな影響を与えていることが新たに明らかになったため、流入角の変動にロバストな案内羽根前縁形状を提案する。
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今後の研究の推進方策 |
1.ディフューザ失速の初生現象の解明:失速点近傍において、ディフューザ案内羽根前縁部シュラウド側で発生する竜巻型の渦がディフューザ失速の初生に与える影響を調査する。特に竜巻型の渦の発生には、羽根車吐出流の変動による流入角の変化が重要な影響を及ぼしているため、入口境界に流入角の変動を与えたディフューザ領域全周での数値解析を行う。この解析により、流入角の変動による竜巻型の渦の急速な成長によって、旋回失速へと至るまでの非定常的な渦構造を解明する。 2.ディフューザ失速が段全体の失速へと拡大する過渡現象の構造解明:流量を減じた際に、案内羽根前縁部シュラウド側で旋回していたディフューザ失速がハブ側へと移行し、羽根車流路へと拡大し、段全体での失速へと陥る過渡現象のメカニズムを明らかにする。過渡現象中の舌部付近の流れ場の変化に焦点を絞り、実験および数値解析を実施する。実機試験では、スパン方向での失速挙動の変化の初生箇所を同定するため、付け剥がし可能な薄型圧力センサを導入しディフューザ流路の任意の点での圧力変動を測定する。さらに、数値解析により、ケーシング舌部付近で案内羽根スロート部の渦がハブ側にて拡大する際の非定常挙動および発生構造を明らかにする。 3.ディフューザ失速の制御手法の提案:以上より得られた知見を用い、ディフューザ失速の制御手法を提案し安定運転領域の拡大を試みる。受動制御手法として、ディフューザ案内羽根形状の改善を行う。ディフューザ失速の制御に有効だと考えられる、流入角の変動にロバストな案内羽根前縁形状の提案を行う。また積極制御としては、渦構造の制御に有効な噴流印加手法を確立する。案内羽根前縁部の非定常渦を制御するため、噴流を印加する箇所は案内羽根入口部とし、周方向に複数点設ける。予備検討の結果から、失速制御のために噴流を最大で設計運転流量の約2%を半径方向に印加する。
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