圧縮機を実際に運転する際、上記の不安定現象を避けるため、流量マージンを取り運転されている。そのため、不安定現象を制御し作動範囲を広げることで、より高性能な点で運転可能となる。しかし、不安定現象の制御方法は、未だ経験的な手法が多いのが現状である。そこで、本研究は不安定現象の抑制および制御手法を明確に提案するために、遠心圧縮機において、部分流量運転時に発生する旋回失速の発生構造を実機計測および数値解析の両面から調査したものである。特に、ディフューザに発生する旋回失速の構造解明およびケーシングの非対称性が旋回失速に与える影響調査を行った。 本年度は、スクロールも含めた圧縮機系全体を対象としたDES解析より、案内羽根前縁部シュラウド側で旋回していたディフューザ失速がハブ側へと移行し、ディフューザ案内羽根スロート部にて縦渦を構成した後に、羽根車流路へと失速領域が拡大し、段全体での失速へと陥ることを明らかにした。ディフューザ案内羽根スロート部におけるブロッケージの形成により、案内羽根入口部にて局所的に圧力上昇が生じ、羽根車流路内での逆圧力勾配が強くなる。その結果、羽根車喉部においても同様に、流路を塞ぐ縦渦の形成が、ディフューザ失速拡大時の羽根車流路の閉塞の要因であると見出した。 さらに、解析結果を検証するため圧縮機子午面方向での壁面圧力同時計測を実施した。この計測より、解析結果と同様に案内羽根スロート部で段失速の初生が確認された後にディフューザ入口部から上流側での圧力上昇を伴いながら、圧縮機全体へと拡大していくことを明らかとした。以上より、ディフューザスロート部の渦構造を制御することでディフューザ失速の拡大を抑制できることが示唆された。
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