鉄筋を配していないコンクリートにアンカーボルトを埋込んだ試験体を対象に,繰返しせん断力を与える実験を行った。これは,昨年度の単調載荷実験を進展させたもので,境界条件として,加力点がピンになるよう工夫したものになっている。このことにより,これまで提案してきた弾性支承梁理論との対応を検討できることに加え,耐震補強等でコンクリート部材同士を接合するアンカーボルトにおける部材境界面で曲げモーメントが零になる場合を模擬できると考えた。実験は頭付きアンカーボルトと接着系アンカーボルトを対象にした。 実験の結果,最大耐力はアンカーボルトのせん断降伏耐力よりも小さくアンカーボルトの曲げ降伏により決まった。せん断力と水平変位の関係における剛性とアンカーボルトの曲げ降伏耐力を弾性支承梁理論と提案したコンクリート反力係数によって精度良く評価できた。 また,コンクリートのコーン状破壊耐力に対するコンクリートに作用する圧縮力の影響を把握するために,せん断力を与える加力点高さを変化させた実験を行った。加力点をコンクリート表面から離すことで,アンカーボルトにはせん断力と引張力,はしあきのコンクリートには圧縮力が作用する。実験は頭付きアンカーボルト,はしあき距離がアンカーボルト径の5.8倍~8.8倍,加力点高さを600mmまでを対象にした。 実験の結果,はしあきでのコーン状破壊を再現することができた。はしあき距離が大きくなることで破壊耐力は増大した。一方で,加力点高さを大きくすることで破壊耐力は減少した。このことから,せん断力に加えて曲げモーメントが作用することでコーン状耐力が低下する可能性があることがわかった。
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