本研究の目的は、自殺未遂者支援事業における行政保健師の専門的支援について明らかにすることであった。対象者は女性5名(20代~60代)、行政保健師経験年数の平均は26.2年であった。インタビュー内容を分析した結果、【継続的に関わる中で支援の糸口を見出す】、【行政特有のサービスにつなげて信頼を得る】【関係機関との関係性の構築に重きを置く】【責任を分散して対応する】【見守り体制を構築した上で支援を終結する】という5つのカテゴリーが抽出された。 自殺未遂者支援事業において保健師は、自殺未遂をした直後に医療機関等から相談者を把握し、関わることが多かった。相談者の状態の不安定さや警戒心を考慮し、初回の面接で全てを把握することはせず、関係性を構築していく中で徐々に自殺未遂に至った要因を把握し、適切な支援を提供していることが分かった。また、行政という信頼の置ける機関である強みを生かし、自立支援医療や高額療養費助成制度といった具体的な公的サービスを案内することで相手の信頼を得て、その後の関係性の構築につなげていることが分かった。 行政保健師は日ごろから関係機関とのネットワークを重要視し、顔の見えるつながりを作ることで、些細なことでも情報共有できる関係性を構築していた。その上で、上司や関係機関と常に情報を共有し、様々な視点から責任を分散して対応することで、保健師が一人で抱え込まない環境を意図的に作っていた。更に、相談者が適切な関係機関とつながり、保健師以外に継続的な関係性が構築されたと判断した時、能動的な支援を終結していることが分かった。
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