成長期の少年野球選手において,肩や肘の障害は多く発生するとされる.特に,筋骨格系の変化が著しく骨の成長過程にある中学生野球選手において繰り返しの投球ストレスが投球障害につながる可能性が考えられているが,大規模な疫学調査や障害にかかわる危険因子の検討は行われていない. 本研究は,骨端線閉鎖前の中学野球選手における,投球障害の疫学調査および障害発生の危険因子の解明を目的とした. 平成28年度より,中学野球選手の投球障害発生状況の実態把握のため,メディカルチェックを開始した.対象は,県内チームに所属する硬式120名,軟式325名とし肩肘の超音波画像所見,理学所見,身体所見および投球フォーム撮影を行った.結果,過去に投球時に肩肘痛を経験した選手は硬式では7割に上り,軟式においても半数に認められた.また,調査時に痛みを有する選手は,痛みの経験のない選手と比較し,投球側の肘関節屈曲可動域および肩外旋筋力が有意に低下していることが明らかとなった.さらに,硬式および軟式の使用球の違いによる,障害発生頻度の違いが認められ,硬式選手においては痛みを有する選手ほど,高身長・高体重と体格差が障害発生に関与する可能性が示唆された. 現在得られた結果について,学会発表(第29回日本臨床スポーツ医学会学術集会)を予定している.今後は追跡調査とともに,障害発生にかかわる因子について改善プログラム介入を実施し,障害発生予防に向けて取り組む予定である.
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