社会経済の変化に伴う労働衛生への取り組みが重要課題となっている今、産業看護職の資質能力をさらに強化するとともに多様な資質能力をもつ人材を柔軟に配置し活動を展開していく事が求められている。そのためには産業看護職の資質能力の可視化が不可欠となる。必要な資質能力を定義した上で、それらの能力をどのレベルで身についているかを明確にしてはじめて産業看護職の能力開発への取り組みが有効に機能していくと考えられる。 産業看護職は、事業場に医療従事者が1人という環境で勤務する場合も多く専門職としての資質能力の開発は自己研鑽に委ねられている。1人きりの職場の場合、自己の資質能力は他者から評価されにくく自己評価に頼るしかないが、これらを的確に評価できる尺度は今のところ存在しない。 本研究の目的は、事業場に1人で勤務する産業看護職が自らの資質能力を自己評価できる尺度を開発する事である。2017年度は前年に作成した尺度案の信頼性・妥当性の検証を行った。調査対象者に尺度案と無記名自記式質問紙を郵送にて配布回収しデータを分析した。データは、平均値などの基本統計量に加え、I-T相関や項目間相関分析、G-P分析による項目分析を行った。項目分析で削除する項目はなかった。探索的因子分析の結果、3つの下位尺度、計16項目からなる尺度が開発された。尺度全体と各因子のCronbachのα係数を算出した結果、内的整合性が確認できた。基準関連妥当性の検討では、Sense of Coherence(S0C-13)の下位項目である「把握可能感」との相関をみたが、統計学的に有意な相関があることが確認できた(p<0.001)。しかし、検証的因子分析でモデルを作成し共分散構造分析による適合度を確認した結果、十分な値が得られなかったため今後、尺度項目の更なる検証が必要であることが明らかとなった。
|