研究課題/領域番号 |
16H07310
|
研究機関 | 山梨学院大学 |
研究代表者 |
清水 知佳 山梨学院大学, 法学部, 准教授 (10585243)
|
研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
キーワード | 環境法学 / 公法学 / 原子力法学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、国が唯一かつ排他的な規制主体である原子力安全規制の分野において、地方自治体の法的役割をどこまで拡大させることができるのかを追求することである。 本年度においては、まず、文献研究として、原子力安全規制における国と地方自治体の特殊な権限配分の根拠を明らかにすることに努めた。そこで国会討論や審議会の資料等を収集し分析したが、国に排他的な権限を認めることに対する強固な反対意見というものは収集した範囲ではあるが見つけることはできなかった。そこから、権限配分に関する議論そのものを欠いた上で各種原子力関連法が制定されていると推測した。そして、そのように解すると、原子炉等規制法等が、「国のみを規制主体とする」、「地方自治体による規制を認めない」といった明文を置かなかったことへの説明ともなりうると考えた。 上記文献研究に加え、本年度はインタビュー調査を行うことができた。静岡では、中部電力、県、御前崎市に対して、原子力安全協定の法的拘束力に対する見解等を聞くことができた。3者ともに、原子力協定は紳士協定であると理解していることが分かったが、日頃の情報共通から安全を確保していこうという認識が共通していると感じた。協定に含まれる事項のなかで最も議論のあるのが、「事前了解」規定であるが、静岡県では設けられていないため、次年度の調査にて他県を訪れたい。また、福島では、福島市を中心に、原子力安全協定が掲げる、被災後の生活レベルの維持という目標が達成できているか否かについて、実際に子供を連れて戻ってきた母親等にインタビューすることができて有意義であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献研究については、所属大学図書館の貸借サービスや各種データベースによって主要な文献について収集、分析することができた。 インタビュー調査についても、静岡と福島にて実施することができた。県と立地自治体、原発事業者の3者からそれぞれの意見を聞くことができ、立場は異なるが、原子力の安全規制への進出に慎重であるという姿勢は共通している、ということがわかった。 研究成果の公表については、2017年2月に、原子力法学を専門とする行政学者数名とともに研究会を開催しているが、論文等にて公表していないので、来年度は広く社会に向けて発表することとしたい。
|
今後の研究の推進方策 |
文献研究はこれまでの国内法の分析に加え、今後はアメリカの原子力法制を対象として比較分析を行いたい。また、インタビュー調査は、当初2年度目は海外調査のみ目的としていたが、引き続き国内調査(福井、北海道、熊本など)を行っていきたい。
|