Chlamydia trachomatis(以下、性器クラミジア)は日本だけでなく、世界的に性感染症の主要な原因菌として問題となっている。これまでのクラミジア研究は、クラミジアが人工培地で増殖させることができず、ヒトなどの細胞内でしか増殖させることができないという特異な性質のために、細胞内での生存様式や細胞修飾機構などの研究が主体であった。しかし、クラミジアの病態形成機構をより詳細に把握するためには、クラミジアが有するタンパク質の作用や機能を明らかにすることが必要となると考えられる。しかしながら、クラミジアのタンパク質研究はクラミジアの持つ性質のために十分には進んでおらず、大腸菌による発現系では十分に目的タンパク質を得ることが困難であった。そこで、本研究では、クラミジアのタンパク質発現系を、従来の大腸菌を用いた発現システムではなく、Brevibacillus分泌発現システムにより導入し、効率的なクラミジアタンパク質の発現系を確立するために研究を進めようと試みた。 まず、クラミジアの機能がある程度明らかになっているタンパク質をBrevibacillus Expression System II(Takara-bio)を用いて導入・発現させるために、性器クラミジアの近縁種で取り扱いが容易であるParachlamydia acanthamoeba(以下、パラクラミジア)を用いて、Brevibacillus分泌発現システムへの導入をさせるべく実験を進めてきたが、タンパク質を発現させるまでには至らなかった。クラミジアのタンパク質をコードする遺伝子配列の特徴と大腸菌やBrevibacillusの特徴が異なる可能性が影響しているのではないかなどについて検討していく。本研究によって、クラミジアのタンパク質発現が困難であることが再確認され、今後のクラミジア研究の一助になった。
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