研究実績の概要 |
高齢の慢性腎不全患者が長期間に渡り在宅で腹膜透析(Peritoneal Dialysis, PD)を継続するためには、腹膜炎やPD離脱の有害事象の発生を防ぐ必要がある。本研究の目的は、腹膜炎・PD離脱等の有害事象の発生を前向きに観察することで、高齢のPD患者における有害事象のリスク因子を明らかにすることである。 平成28年度は65歳以上のPD患者をリクルートし、36名(年齢75.3±6.1歳、BMI22.6±3kg/m2)の身体機能・認知機能とADLの測定を実施し、観察を開始した。対象の身体機能の平均値は、握力が22.8±7.8kg、膝伸展筋力が35.8±9.6%、6分間歩行距離が325.7±111.2mであり、先行研究で示されている各測定項目の基準値と比較すると、いずれも半数以上の患者が基準値を満たしていなかった。その他の身体機能の測定項目としては、10m歩行速度が1±0.3m/s、Short physical performance batteryが9.8±2.5点であった。ADLは、Functional independent measure(FIM)運動項目の合計が88±5点、FIM総合計が122.6±5.6点であった。認知機能の測定項目であるMini-Mental State Examinationの平均は25.9±4.5点であった。サルコペニアの有無をAsian working group for sarcopeniaの基準により評価すると、4名(11.1%)が該当していた。 今後は若手研究Bにて、対象者におけるPD関連の有害事象(PD離脱、腹膜炎)や、急性疾患の発症・転倒・入院・死亡等の有害事象の発生を観察し、有害事象の発生と身体機能・認知機能・サルコペニアとの関連を検討する予定である。
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