研究課題/領域番号 |
16H07315
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
飯塚 隆藤 愛知大学, 地域政策学部, 准教授 (10516397)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 水陸交通 / 河川舟運 / 歴史GIS / 淀川流域 / 利根川流域 / 近代 / 歴史地理学 / 地理情報科学 |
研究実績の概要 |
近代の交通に関する研究は,大きく水上交通(舟運・海運)と陸上交通(主に鉄道やトラック)の2つに分けられ,それぞれ研究蓄積がある。近年では,水陸交通の両側面から取り組んだ研究がみられるものの,両者の近接性や輸送補完関係などに踏み込んだ空間的検討が不十分である。その一方で,明治期から昭和初期にかけて,鉄道網や道路の拡張,河川改修,築港などの交通インフラが著しく変化し,近代の交通を取り扱う場合,時間的検討も必要となる。そこで本研究では,まず,時空間分析ができるように近代水陸交通に関する歴史GISデータベースを構築する。次に,近代水陸交通の地域的変化を分析し,その地域差が生じる要因や変遷過程を明らかにする。最終的に,歴史GISを用いた新たな水陸交通研究を提示する。 平成28年度は,本研究の遂行に必要な史資料,地形図,地図類の収集およびデータの整備を行った。具体的には,基盤となる近代水陸交通に関する歴史GISデータベースを構築するために,明治期から昭和初期にかけての旧版地形図のデジタル化を行った。これまで博士論文で検討を続けてきた淀川流域と同じ手法で,本年度は利根川流域を中心に作業を進めた。まず,流域内を網羅する旧版地形図を入手し,愛知大学で所有する大型スキャナーを利用して,TIF形式でデジタルデータ化した。次に,ArcGISを用いて,TIF形式の画像のジオリファレンス(緯度経度座標の付与および幾何補正)を行い,そして,GISデータ化(ラスターデータ)した。さらに,データ化した旧版地形図をもとに,河川や港湾,主要道,鉄道などの水陸交通に関わるGISデータ(ベクターデータ)を作成した。 上記の作業とともに,利根川流域では現地調査(フィールドワーク・資料収集・聞き取り)を実施した。本年度は最上流部から中流までを範囲としたが,調査を通して,新たな情報を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究活動スタート支援」の採択を受けて,本年度は歴史GISデータベースの構築には必要不可欠な高スペックのワークステーションやデュアルディスプレイなどの研究機材を導入できた点が大きい。現地調査においても単焦点のデジタルカメラや地理情報を取得するためのGPSを導入し,よりスムーズに調査を実施することができた。こうした研究機材を駆使しながら,近代水陸に関する歴史GISデータベースを構築するとともに,利根川流域での広範囲(最上流部吾妻川の中之条町から中流部の関宿まで)にわたるフィールドワークを実施した。 また,近代水陸交通のなかでも,本研究では淀川流域と利根川流域を中心に進めていくわけだが,明治期における全国の河川舟運の様相や,淀川流域・利根川流域・木曽三川流域におけるの河川舟運の地域的変化について,歴史GISデータベースを構築し,地図化・分析を行った。その成果は,『地域政策学ジャーナル』(第6巻第2号,2017年3月)に掲載できた。 当初の予定では,淀川流域においてもフィールドワークを実施する予定であったが,最終的な成果として淀川流域と利根川流域を比較検討することを考慮して,後者を優先とした。以上のように,平成28年度は当初の研究計画と照らし合わせて,おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,前年度に引き続き,旧版地形図のGISデータ化(昭和初期まで)を進めるとともに,淀川流域と利根川流域におけるフィールドワーク(継続調査・資料収集)を実施する。具体的には,淀川流域では大阪港や淀川河口部,寝屋川,神崎川などの昭和初期に最も河川舟運が盛んであった地域を中心に,利根川流域では中流の関宿付近から銚子港までの利根川,中流部へ流れ入る鬼怒川,霞ケ浦や北浦などの湖沼群,小貝川,東京湾へ流れ注ぐ江戸川など,広範囲にわたりフィールドワークを実施する。 前年度から構築してきた近代水陸交通に関する歴史GISデータベースをもとに分析し,9月に三重大学で開催される日本地理学会や地理情報システム学会などで,学会発表を行う。そして,論文としてまとめたうえで,最終的な成果として『地理学評論』や『人文地理』などの主要な学術雑誌に投稿する。
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