1.前年度に引き続き、江戸時代中期の文人旗本三橋成烈(みつはしなりてる、1726~1791)が安永期(1772~1780)の大坂在番中に江戸在住の親族朋友と交わした往復書簡集『飛檄』『飛檄随筆』の校注作業を行った。具体的には、(1)前年度に読解、翻字を進めた粗稿に点検を加え、随時、修正を施した。(2)注釈の内容を充実させるべく、関連資料の調査、収集に努めた。 2.1.の作業を通して得られた情報をもとに、成烈作品の読解を行った。具体的には、(1)『新斎夜語』第五話「岐阜の老尼、出離の縁を明す」が契沖著『百人一首改観抄』、庄司勝富著『異本洞房語園』と重なること、『新斎夜語』第九話「鍛冶国助、家業に託して士を諷ず」が文耕堂・三好松洛・小川半平・竹田小出雲著『新うすゆき物語』、橘守国画『絵本通宝志』と重なることを指摘、作品の解釈を試みた。上記については、東海近世文学会で報告を行った。(2)『続新斎夜語』成烈自跋中の成烈の和歌が平安鎌倉期の歌人西行の一首を踏まえて詠まれていることを指摘、作品の背後にあった成烈の経歴や交友圏、読書歴を確かめたうえで、作品の解釈を試みた。上記については、上方読本を読む会で報告を行った。
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