研究課題/領域番号 |
16H07323
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
福江 慧 京都産業大学, 神山天文台, 研究員 (20785753)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 天文 / 変光星 |
研究実績の概要 |
本研究の主たる目的は「未開拓な銀河系バルジ方向のセファイドの金属量を導出し、バルジの星形成史を求めること」である。そのためには標準的な天体を用いて、セファイド型変光星(以下、セファイド)の組成解析方法を確立することと、実際に銀河系バルジ方向に位置するセファイドの高分散分光観測を行う必要がある。これらの観測は2016年12月に京都産業大学から南米チリのLa Silla観測所に移設された近赤外線高分散分光器「WINERED」を用いて行う。 1、組成解析方法について 報告者はこれまで、東京大学の松永氏、京都産業大学の近藤氏らとともに、近赤外線高分散データを用いた恒星の組成解析方法について議論を重ね、最も基本的な恒星の物理量である有効温度について標準的なセファイドで周期に応じて導出できる方法が見つかり、導出される金属量も文献値と相違ないものとなり、基本的な方法が確立されつつある(Fukue in prep)。これらの方法はWINEREDでの実際の観測データについても適用を行いつつある段階で、標準的な天体ではこれまでの金属量と合致する結果を得ている(Kondo in prep.)。 2、セファイドの観測について 観測データのクォリティは天体のシグナルに対するノイズの比(S/N比)によって左右され、これまでの京都でのWINEREDの観測等から組成解析にはS/Nが100以上必要であることが経験的にわかってきている。また観測対象であるバルジ方向のセファイドは遠方にあるため太陽近傍のセファイドと比べても暗い。それに加えて銀河系バルジや銀河系中心方向を観測するには南天での観測が必須となる。WINEREDはこれらの要求を満たす最適な観測装置といえ、移設後の試験観測でも良好な観測データを取得することができた。バルジ方向のセファイドについての観測は今後本格化される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1、組成解析方法について 変光星の基本的な解析方法に有効な手法は確立されつつあるが、WINEREDとは別の観測装置での観測データを主に使って確認されたものである。従って、これらの手法のWINEREDでの観測データへの適用が必要となり、現状は最終的にWINEREDデータに適用できるかについて確認が始まったところである。 2、セファイドの観測 2017年の1月及び2月に行われたLa Silla観測所での試験観測で、セファイドの観測データも複数取得でき、良好なデータが得られることが確認されている。本研究の主たる観測対象である銀河系バルジのセファイドはこれから本格的に観測が開始されるところであり、それらの観測は主に今季後半以降になる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
1、校正用天体を用いた変光星の組成解析方法の確立 これまでの校正用天体の観測データから、恒星の基本的な物理量、特に最も基本的な物理量である恒星大気の有効温度を決定する方法が確立されつつある。この方法を変光星に適用させて観測した位相に応じた物理量が導出できるかについて試験を行い、変光星の基本的な方法を確立させる。
2、WINEREDを用いた銀河系バルジ方向のセファイドの観測 WINEREDは2016年12月に京都産業大学からチリのLa Silla観測所にあるNTT望遠鏡に移設され、2017年1月と2月に報告者も参加して観測が行われた。今後もWINEREDはチリでの運用が予定されており、本研究の主な対象である銀河系バルジ方向のセファイドの観測も引き続き実施される予定である。報告者も観測に参加するために渡航を計画しており、観測後は速やかに解析を行い共同研究者と観測結果について議論する。
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