本研究では、17世紀初期のロンドンで出版・再出版されたエリザベス朝期の劇作品の分析を通じて、当時の演劇出版文化が政治的・宗教的潮流と密接な繋がりをもっていたことを明らかにした。特に、なぜ書籍商たちはジェイムズ朝に入って特定のエリザベス朝期の劇作品を出版し始めたかという問いを立て、それに対してこれらの劇作品がジェイムズ朝期の市民の政治的・宗教的な関心を満たす要素を備えていたためではないかという先行研究にはなかった議論を展開した。そして、本研究の仕上げとして、シェイクスピアの悲劇を含む劇作品の分析を行い、同時期に執筆・上演された劇作品も、こうした演劇出版文化と強く結びついていたことを提示した。
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