研究課題/領域番号 |
16H07336
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研究機関 | 花園大学 |
研究代表者 |
柳 幹康 花園大学, 文学部, 講師 (10779284)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 中国仏教 / 日本仏教 / 『宗鏡録』 / 撮要本 / 鎌倉・室町期の禅 |
研究実績の概要 |
初年度にあたる平成28年度は研究の進展状況に鑑み、当初は二年目に行う予定であった日本の鎌倉・室町期の禅宗における『宗鏡録』受容の分析に重点を置き、以下の通り研究を進めた。 1、栄西の『宗鏡録』受容について解明した。栄西(1141-1215)は日本臨済宗の祖とされる平安末―鎌倉初の禅僧で、その著『興禅護国論』には『宗鏡録』の引用が計4例見える。関連する文献ならびに当時の時代背景に照らして分析することで、(1)天台宗から受けた批判に反駁し、(2)ともに布教を禁じられた能忍の禅と自身を峻別するための理論根拠として、また(3)大蔵経閲覧が困難な当時における教説の一大集成の書として、『宗鏡録』が受容されたことが明らかになった。 2、円爾の『宗鏡録』受容について解明した。円爾(1202-1280)は日本臨済宗興隆の礎を築いた鎌倉期の禅僧であり、その著と伝えられる『十宗要道記』、ならびに同時代の文献を比較分析した。これにより『宗鏡録』が、(1)既存の諸宗との確執を解消し、(2)禅宗の独自性を主張するための根拠として用いられていることが判明した。 3、禅宗以外の『宗鏡録』受容についてその概要を解明した。平安末から室町にかけて著された諸宗の文献を調査し、当時『宗鏡録』が真言・浄土・法相・三論・律・天台・時宗など諸宗で幅広く用いられていたことを明らかにした。 またこのほかにも、4『宗鏡録』の撮要本『冥枢会要』の訳注作成を進めたほか、5『宗鏡録』の実践観や、6『宗鏡録』の作者である延寿像の時代的変遷について論文を作成し、それぞれ然るべき研究誌に投稿、受理された。加えて国内外の各種学会に参加して上述の研究内容に関する研究発表をしたほか、訪韓時に同国『宗鏡録』研究者朴仁錫氏と交流し、韓国『宗鏡録』受容に関する教示を受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は二年目に予定していた内容を先に進めるなど計画遂行の順番に変更は生じたが、当初予定されていた以上の成果(研究実績の概要5、6)が得られたため、当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において当初二年目に予定していた研究計画を遂行したため、次年度においては当初一年目に予定していた研究計画、すなわち(1)撮要本『冥枢会要』の訳注作業を引き続き進めるとともに、(2)中国宋代仏教界における『宗鏡録』受容の状況について調査し、(3)『宗鏡録』の各種版本の調査・収集等を行う予定である。
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