研究課題/領域番号 |
16H07343
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
福井 美保 大阪医科大学, 医学部, 助教 (70782241)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 学習障害 / 低出生体重児 |
研究実績の概要 |
1.大阪医科大学LDセンターに学習困難を主訴に来院された児のうち、出生体重1500g未満の早産極低出生体重児(以下、VLBWI)の視覚情報処理能力を評価したWAVES(Wide-range Assessment of Vision-related Essential Skills)の結果を、出生体重が1500g以上2500g未満の児、2500g以上の児の3群で比較検討した。困難さを主訴としてすでに来院されていたVLBWIでは、他の群と比較して視覚認知に関する能力が有意に低下していた。 2.VLBWIに対する視覚情報処理能力と学習能力の評価として、本年度は、大阪医科大学附属病院で出生し、4歳時の新版K式検査でDQ80以上を確認した小学校1年生~3年生の23名に検査を行った。検査は、WISC-Ⅳ、WAVES、単音・単語・単文音読検査(稲垣, 2010)、小学生の読み書きスクリーニング検査(STRAW)、包括的領域別読み能力検査(CARD)、視覚性注意課題(CPT)を行った。検査とおこなった23名は、特に学校において学習の問題を指摘されていない児であったが、7名に読み障害をみとめ、境界域発達の児は2名であった。さらに、学習成績は問題ないが、不注意、衝動性を認める症例も多く認められた。また、これらの児での視覚情報処理検査の成績はおおむね正常であった。 視覚情報処理能力はVLBWIの学習に関して、影響をあたえていることは確認された。読み障害の原因には、発達性ディスレクシアだけではなく様々な原因が関与することがわかっており、視覚認知能力の問題もその一因となりえるが、VLBWIの読み障害の原因については、視覚情報処理能力以外の問題が考えられ、その原因を検討していくことは、学習指導において有意義であると思われる。今後、読み障害を呈した児にたいしては、さらなる原因分析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VLBWIの検査については、当初予定していた人数よりは少ない結果となった。検査を行える時期が長期休みを利用することになるため、秋以降からの開始では、十分な時間を確保できなかったこと、小学校1年生の評価は読み書きの学習が終了している学年の終わり行うことが適していると考えるため、期間が限定されたことも要因であった。しかし、平成28年度の検査で、学習評価を行うのに適した時期や効率よく検査を行うための日程調整、手順などを確認することができた。平成29年度に行う検査対象人数や日程調整には有益な情報をえることができたと考えており、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に行った検査結果を分析し、視覚情報処理能力と学習の問題について関連を検討する。 平成29年度では、今回検討できなかった小学校4年生から6年生の学習内容の習得状況についても検討をおこなう。さらに、他施設の小学校低学年の児の検討を平成29年末~平成30年にかけて順次おこない、学習内容の習得状況や保護者の心配事などについて評価を行う予定である。 また、大阪医科大学LDセンターを自ら受診される児は、学習困難をすでに感じている児であることから、幼児期に視覚認知能力の低い児を確認することは学習困難を抱えることを予見できる可能性がある。そのため、当初の計画通り、就学前のVLBWIを対象として、視覚認知能力を評価し、就学後の状況を確認できるよう準備を進めていく予定である。
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