本研究の目的は、組織を取り巻く利害関係者がどのように組織不祥事を作り上げているか(かつ、それにどう対処すべきなのか)を明らかにすることである。この目的に対して本研究は、組織不祥事を「様々な利害をもつ人々のクレーム申し立て活動を通じて問題化されたもの」として再定義し、これを調査するための理論的検討と経験的検討を実施する。 まず、研究論文に言及する。次年度となる本年度では、初年度にて国際学会で報告した理論的検討の研究成果を国際雑誌査読付き論文として公刊した。具体的には、組織不祥事研究の言語的アプローチの分析方法として言説分析、内容分析、ナラティブ分析を実施した場合に、どのような分析結果が可能となるのかを既存研究の萌芽的取り組みをもとに検討した。また、組織不祥事研究に隣接する研究としてレジリエンス研究を取り上げ、レジリエンス概念がいかに類型化可能であるのかを理論的に検討した。 次に、研究報告に言及する。本年度では、組織不祥事の経験的検討として内容分析を実施した上で、組織不祥事が経時的にどのような出来事とともに変遷しているのかを明らかにした。しかしながら、それはあくまで過去・現在・未来という時間の中で、出来事の発生を必然の産物として捉えているに過ぎないという実証主義的歴史学への批判がある。そこで本研究では、出来事の発生を偶然の産物として捉える解釈主義的系譜学を参照した考察を行い、1990年代の証券不祥事を対象とした事例研究を行った。
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