平成29年度は、全国的な視座から非進学校の進路問題を明らかにするため、質問紙を作成し全ての商業高校・工業高校(合計約1100校)を対象にアンケート調査を行った。回収後は、データを電子データ化するために入力作業を行い、統計処理のソフトウエアを使用して単純集計、クロス集計、T検定による平均値の比較などにより検討を行った。その結果、商業高校においては、進路状況によって重視する教育活動に違いがあり、同じようなカリキュラムの学科であっても、地域の高等教育機関の分布状況や地理的な要因により進路の形成過程に差異が生じる傾向が見られ、地域特性や教育課程が学校の指導(進路指導・生徒指導)との間に関連性があることがわかった。さらに、地域特性に関してインテンシブな分析を行うため、祭礼を通じて地域の特徴が表出しやすいと考えられる、ある地域の青年団を対象としたフィールドワーク調査のデータ分析を行った。昨年度の成果を踏まえ、詳細に青年団に所属する若者(10名)のインタビューでデータを読み解いたところ、彼らは地域の祭礼行事に関わる大人たちとの交流を通じて、高校での授業への取り組み方や部活動の参加などの学校生活に対して、地元の社会的文脈に沿った行動規範や価値を認識していることがわかった。それゆえ本調査からは、地域の文化的側面に着目した高校生研究の可能性とそれを変数に加える必要性を示唆することができた。 以上の成果の一部は、中国四国教育学会、台湾教育社会学会での学会発表をはじめ、学会機関紙や学内紀要において報告した。
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