中国の南北朝時代(5~6世紀)、北朝は鮮卑を中心とする非漢人、南朝は漢人が政権を握っていた。しかし、北魏孝文帝の改革(5世紀末)以後、北朝の非漢人は徐々に中国化が進み、彼らのエスニック・アイデンティティ(民族集団に対する帰属意識)も変容した。その結果、7世紀には漢人を標榜する楊氏・李氏による隋・唐帝国が成立し、東アジアに大きな影響を与えるに至った。 本研究では、南北朝時代から隋唐時代への変容を解明するために、非漢人のエスニック・アイデンティティ変容の過程を分析した。その結果、北朝後期の多くの鮮卑系官僚が非漢人と漢人の間でアイデンティティが揺れ動き、様々な道を選んでいたことが明らかとなった。
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