マウスの心筋細胞でErbB2を強発現させることにより、心筋細胞の脱分化・増殖を誘導し、心機能を回復させることを試みている。その目的のためにRosa遺伝子座でCMVプロモーターの下流にErbB2を発現誘導できるノックインマウスを作製している。まず、コンディショナルにErbB2を発現誘導するターゲティングベクターのデザインを当初のデザインを改変した。すなわち、1 )ErbB2を目的の細胞で安定して強発現できるように Rosa遺伝子座の転写開始点を除いた上でCMVプロモーターを配置し、2) 心筋細胞で癌遺伝子であるErbB2を強発現させたままにしておくと病的な心筋細胞になってしまうため、プロゲステロンアナログでtransgeneを除けるようにあらたにroxP配列をErbB2 cDNAの両端に配した。また、3) mCherryをヒストン融合とすることにより核をラベルし、ErbB2を強発現している細胞をよりトラッキングしやすくした。次に、この改変ベクターを用いてES細胞のRosa遺伝子座への相同組換えを行った。Crispr/Cas9を用いることにより適切に相同組換えを起こしたES細胞のクローンをいくつか得ることに成功した。現在、これらのESクローンを8細胞期胚にインジェクションし、偽妊娠マウスの子宮に移植を終えたところである。また、roxP配列ではさまれたErbB2 cDNAを除去するための変異プロゲステロン受容体融合Dreリコンビナーゼを全身で発現するノックインマウスも作製中であり、すでに相同組換えを起こしたES細胞のクローンを得ている。
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