研究課題/領域番号 |
16H07356
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
角田 郁生 近畿大学, 医学部, 教授 (00261529)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | ウイルス / マイクロアレイ / 免疫学 / トランスレーショナルリサーチ / 多発性硬化症 / 神経ウイルス学 / 自己免疫 / 動物モデル |
研究実績の概要 |
従来、多発性硬化症 (multiple sclerosis, MS) では、IL-17 産生型ヘルパー T 細胞 [T helper (Th)17] は増悪に、制御性 T細胞 [regulatory T cell (Treg)]は抑制に働くとされてきた。これは自己免疫誘導型MSモデルでこれらの細胞を抑制した結果から得られた説である。一方我々はタイラーウイルス[Theiler's murine encephalomyelitis virus (TMEV)]によるウイルス感染型 MS モデルを用いて Th17細胞および Treg細胞 を増加させる手法 (ゲイン・オブ・ファンクション)を用いて、Th17細胞には 1) 炎症の増悪、2) 抗ウイルス免疫の抑制、3) 神経保護作用の 3 つの役割が、また Treg細胞には 1) 炎症の抑制、2) 抗ウイルス免疫の抑制の 2 つの役割がある可能性を示してきた。そこで本研究課題では、これらの細胞の役割を介入実験により検証する。ヒトMSにおいても、病因 (自己免疫 vs ウイルス感染) あるいは病期(病初期vs進行期)によって Th17細胞および Treg細胞の役割が異なる可能性があるので、本研究はMS 患者のテーラーメード治療の確立へと繋がることが期待される。
平成28年度においては、Th17細胞-Treg細胞からなる系とTh1細胞-Th2細胞からなる系の二つの系からなるCD4+Th細胞と他の獲得免疫系であるCD8+T細胞と抗体の役割を対照させ、Th17細胞とTreg細胞の上記の役割をより明確にすることに成功した。さらに、これらの免疫系の役割を、1)TMEVが誘導する他の病態(心筋炎、てんかん)および 2)他のウイルス感染症(とくにジカウイルス)におけるものとも対照し、MSにおけるユニークな役割を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Th17細胞とTregsのMSウイルスモデルにおける役割を、他の免疫系のエフェクターと対照比較した結果は極めて少なく、またTMEVの三つのモデル(MSモデル、心筋炎モデル、てんかんモデル)との比較、TMEVとジカウイルス感染症との比較対照したのは、我々が世界ではじめてである。上記の三つの比較対照結果は、それぞれ学会および論文の形で発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度には、MSウイルスモデルにおけるTh17 と Tregs の役割を更に検証する。これによりTh17とTregsサブセットによるウイルス感染および炎症性脱髄病変形成への影響を明らかにする。具体的には、TMEV モデルにおいて、抗 IL-17 抗体を用いた Th17 反応抑制を行い、1) 抗ウイルス免疫、2) 炎症性脱髄、3) 軸索障害への影響を明らかにする。また、TMEV 感染 RORγt-Tg マウスに CD8+ T 細胞を移入し、病態への影響を調べる。Tregsの役割は、Tregs を移入した TMEV モデルにおいて抗体・siRNA・KOマウス等を用い、IL-10 を抑制することで IL-10 の役割を検討する。IL-10 以外の分子を更に網羅的多変量解析で同定する
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備考 |
本研究課題に関する学会発表及び共同研究の進捗を研究者のwebページにて情報発信した。
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