研究課題
従来、多発性硬化症(MS) では、IL-17 産生型ヘルパーT 細胞(Th17) は増悪に、制御性T 細胞(Tregs) は抑制に働くとされてきた。これは自己免疫誘導型MS モデルでこれらの細胞を抑制した結果から得られた説である。一方我々はウイルス感染型MS モデルを用いてTh17 およびTregs を増加させる手法(ゲイン・オブ・ファンクション)を用いて、Th17 には1) 炎症の増悪、2) 抗ウイルス免疫の抑制、3) 神経保護作用の3 つの役割が、またTregs には1) 炎症の抑制、2) 抗ウイルス免疫の抑制の2 つの役割がある可能性を示してきた。そこで本研究課題では、これらの細胞の役割を介入実験により検証した。Th細胞は上記の二つのサブセットの他に、Th1細胞とTh2細胞があるが、平成29年度には、Th1細胞/Th2細胞のゲイン・オブ・ファンクションによりウイルス感染型MSモデルにどのような影響がおこるかの検証も行った。Th1細胞とTh2細胞の分化にそれぞれ必須のトランスクリプション・ファクターであるT-betとGATA3過剰発現マウスは、Th1細胞あるいはTh2細胞のそれぞれへの分化が促進され、免疫反応が偏移する。T-bet過剰マウスではウイルス感染型MSモデルは、ウイルスに対する感染免疫に異常をきたし、そのためウイルス感染が増悪、感染マウスは致死にいたった。一方、GATA3過剰発現マウスでは抗ウイルス免疫は保たれ、ウイルス感染型MSモデルの増悪は認められなかった。ヒトMS においても、病因(自己免疫vs ウイルス感染) あるいは病期(病初期vs 進行期)によって 各Thサブセットの役割が異なる可能性があるので、本研究はMS 患者のテーラーメード治療の確立へと繋がることが期待される。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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