研究課題
抗がん剤による肝類洞閉塞症候群(SOS)の病態形成に組織因子(TF)やPAI-1等の凝固線溶因子が関与するとの仮説のもと、その制御機構を解明することを目的に実験を行った。まず、既報の方法に従い、野生型マウスにOxaliplatinおよび5-FU・Foninic acidの腹腔内投与を週1回投与することでSOS病態を誘導した。計5回投与し、最終投与の1週後にサンプル採取行った。体重は投与回数依存性に減少し、3回目投与以降は死亡個体が見られた。末梢血の血算では、汎血球減少が薬剤投与回数依存性に観察された。肝臓での遺伝子発現解析では、3回目の投与以降にPAI-1 mRNAの急激な増加が見られ、TF mRNAは逆に低下傾向にあった。PAI-1 mRNAの増加と体重減少率には有意な負の相関関係が見られ、PAI-1発現増加の病態悪化への関与が示唆された。その他の凝固関連因子としては、ADAMTS13の発現が低下する傾向にあった。炎症性サイトカイン(IL-6、TNFα、IL-1β)や線維化マーカー(TGFβ、Col1a1、αSMA)の肝臓での遺伝子発現は薬剤投与によって有意に増加したが、炎症性サイトカインについては投与回数が増えると逆に低下する傾向が見られた。PAI-1欠損マウスを用いた実験では、正常マウスと比較して体重減少や死亡率に有意な差異は見られなかったが、肝臓での炎症性サイトカイン・線維化マーカーの遺伝子発現において、薬剤投与による発現増加が軽微である傾向が見られた。TF欠損マウスを用いた実験では、正常マウスに比較して、体重減少や死亡率が高い傾向が見られた。以上の実験結果から、SOS病態においては、薬剤投与による肝臓の炎症・線維化亢進に加え、PAI-1発現増加やADAMTS13発現低下により惹起される肝臓内での血栓傾向がその病態をさらに増悪させるものと推察された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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