本研究では様々な形状からなる数種の半導体ナノ結晶を用いて、例えば透過型電子顕微鏡や走査型レーザー顕微鏡で得た異なる空間スケールの画像データについて、共通空間座標を決定するための手法の確立を目指した。本年度は特に以下の3点について検討し、本助成事業終了後も検討すべき課題が明らかになった。1.上記目標を達成するために、まずは異なる空間スケールの目印となるナノメーターサイズの物質が必要であった。そこで第一の実行課題として、形状の異なる半導体ナノ結晶の合成法の確立を目指した。昨年度の棒状半導体ナノ結晶の長軸長のコントロールに続き、今年度は放射状の半導体ナノ結晶の合成法を重点的に検討した。その結果、強い蛍光を発する半導体ナノ結晶が合成できることを確認した。さらに、シェル構造を合成する際の反応時間に対し、放射状枝部の長さをコントロール出来る事を示した。2.特に透過型電子顕微鏡画像データから、上記で示した半導体ナノ結晶を抽出し、形状を厳密に解析しなければならない。昨年度は棒状半導体ナノ結晶の短軸および長軸長を自動解析出来るようになったが、今年度はより形状が複雑な放射状半導体ナノ結晶において解析を試みた。3.半導体ナノ結晶を細胞中に適切に導入しそれを確認するためには、簡便かつ精度の高いアッセイ法が必要である。昨年度から引き続き、点計測あるいは2次元平面での相関解析法の基礎検討を行った。特に本年度は、適切な測定条件を把握すると同時に、それに基づいて蛍光体の濃度やサイズ等が精度良く解析できることを示した。
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