口唇裂・口蓋裂は、わが国において、500~600名に1名の頻度で出生し、哺乳や咀嚼、嚥下などが困難になり、中耳炎などの耳鼻科疾患、ことばの発声、歯並びやかみ合わせなどの問題が生じる。口唇裂・口蓋裂は、乳児期の手術だけでなく、幼児期の言語訓練や歯列矯正、学童期や思春期での必要時の手術が行われ、継続的な治療が必要となる。口唇裂・口蓋裂がある子どもが小学校に入学し、学校生活が始まるようになると、子どもの周囲の人間関係が拡大し、子どもたちの認知機能の発達がすすむ中で、子どもがさまざまな心理・社会的事柄に直面することが予測される。そこで、本研究では、口唇裂・口蓋裂をもつ子どもがその困難に立ち向かい、前向きに治療の継続や生活ができるように支援する家庭と学校間の協力支援体制を検討することを目的としている。 2016年度は口唇裂・口蓋裂がある子どもが就学時に直面する心理・社会的苦痛を明らかにすることを目的とし、学童期の口唇裂・口蓋裂をもつ子どもの母親を対象に、子どもの就学に伴う母親の不安、就学後の子どもの心理的苦痛の体験の有無、学校教職員との連携や対応について半構造化インタビュー調査を行った。学童期の子どもたちの心理的苦痛の体験の有無や、学校教職員の現時点での対応等、これまで注目されていなかった就学時の口唇口蓋裂児への課題を明確化できた。今年度の研究結果を元に、2017年度は学校教職員に対する調査を実施する予定である。
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