本研究の目的は,公的機関による「立ち直り」支援に着目して,非行少年の「立ち直り」を継時的に明らかにすることである。そのために本研究が取ったアプローチは,(1)非行少年による,非行をしないための諸実践とその類型の調査,(2)支援者における立ち直りに対する認識と,支援の有用性の調査,(3)(1)と(2)を照合し,公的な取り組みが,非行少年に与えるインパクトの検討の3点である。 当該年度は,非行経験者へのインタビューを引き続き行い,また支援者へのインタビューも行った。 加えて,非行支援現場における「立ち直り」の特性をより的確に捉えるために,非行少年に類似する生き辛さを抱える児童虐待の当事者ならびに支援者へのインタビューも行った。 また,本研究は国際比較も視野に入れた研究設計を持っている。申請当初は先行研究事例の豊富さからアメリカの事例との比較を試みたが,日本と類似する少年法制度を有する台湾との比較を試みることにした。前年度において行った,台湾の少年補導委員会や少年院の視察で入手した資料の翻訳を進めるとともに,当該年度では台湾の少年院に勤務する専門家や,非行少年の社会内支援に携わる専門家へのインタビュー調査を行った。 また,台湾の事例と比較を行うために,日本におけるソーシャルワーカーへの聞き取りも行った。 今後は,当該データの翻訳と整理を通して,日台の「立ち直り」支援の比較検討を行い,日本における「非行からの立ち直り」の特性を明らかにするべく研究を進める。
|