研究課題/領域番号 |
16H07390
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
塚本 学 産業医科大学, 医学部, 修練指導医 (70778159)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 慢性閉塞性肺疾患 / 続発性骨粗鬆症 / 骨形態計測 / サルコペニア / 肺気腫 / 男性骨粗鬆症 / COPDモデル動物 / マイクロCT |
研究実績の概要 |
気管内にブタ膵臓由来エラスターゼ(PPE)を投与することで慢性閉塞性肺疾患(COPD) モデルマウスを作成し、マイクロCT を用いることで、同一個体の骨(脊椎椎体、大腿骨遠位部)を経時的に追跡調査した(投与後 0週、4週、8週、12週)。当初の計画では、試験群は5群としていたが、マウスの気管内にPPEを 0.25U / 50μl 以上の濃度で投与すると、高頻度(約70%程度)で数日以内にマウスが死亡することが判明した。このため、試験群を4群に減らし、PPEの気管内投与量を、それぞれ 0U、0.025U、0.05U、0.1Uとすることにした(以下、対照群、PPE 0.025U群、PPE 0.05U群、PPE 0.1U群)。 マイクロCTの解析にて、PPE 0.025U群、PPE 0.05U群、PPE 0.1U群では対照群と比較し、椎体(第4・7・10胸椎および第1・4腰椎)の骨密度変化率が、PPE投与後8週と12週の時点で有意に低値を示していた。一方、大腿骨遠位部の骨密度変化率は、PPE 0.1U群が対照群と比較し、PPE投与後12週時点で有意に低値を示していた。また、PPE投与後12週の時点でこれらのマウスを屠殺し、それぞれの下肢筋肉重量(大腿四頭筋、腓腹筋、足底筋、ヒラメ筋)を比較してみたところ、PPE 0.1U群の体重あたりのヒラメ筋重量が、対照群よりも有意に低値であった。最終的に、肺組織標本で肺の気腫化が実際に生じているかどうかを確認したところ、エラスターゼ容量依存性に気腫化が進行していることを確認した。 今後は、肺気腫が骨代謝動態(骨形成能や骨吸収能のバランス)に与える影響を骨組織標本上で評価する予定である。また、ヒラメ筋重量のみが減少した理由について、筋組織標本上で4種類の筋繊維(1型、2A型、2D型、2B型)を免疫染色することによって定量的に評価する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概ね順調に研究は進展しているが、マウスのエラスターゼ気管内投与量の調整にやや時間を要した。過去の文献を参考にして、エラスターゼ投与量を決定したが、マウスの気管内にPPEを0.25U以上の濃度で投与すると、高頻度(約70%程度)で数日以内にマウスが死亡することが判明した。また、生存したとしても有意な体重減少が起きていた。全てのマウスが死亡することなく、体重減少も生じないエラスターゼ投与量を検討した。その結果、PPEのマウス気管内最大投与量は0.1Uであり、試験群は、対照群、PPE 0.025U群、PPE 0.05U群、PPE 0.1U群の4群に変更した。
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今後の研究の推進方策 |
研究を遂行する上での問題点は、研究に要する時間と費用である。 当教室の大学院生と研究内容を共有し、できるだけ多くの人数で研究に取り組むことで、効率的に研究が進行するようにする。また、標本作成は外部機関や当大学の共同利用研究センターに依頼し、標本作成に要する時間を省くことで標本の評価に重点をおくようにする。 当初の研究計画にはなかったが、筋組織標本に用いる免疫染色用の抗体を追加で購入することを検討しているため、約30万円程度を計上する必要がある。したがって、当初の計画では8種類の骨代謝関連マーカーを測定する予定であったが、3種類程度にとどめておき、結果次第で追加項目を検討する。 この時点で、研究費が不足することが予想されるため、網羅的遺伝子解析によるCOPD骨粗鬆症治療標的遺伝子の検索やCOPD骨粗鬆症に対する治療介入研究については、今後の研究テーマとする。今回の研究結果については、本年度中に国際学会または学術論文にて報告する予定である。
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