気管内にブタ膵臓由来エラスターゼ(PPE)を投与することで慢性閉塞性肺疾患(COPD)モデルマウスを作成し、投与12週間後に採取した肺、脊椎、下肢骨(大腿骨、脛骨)、血液、下肢筋(大腿四頭筋、腓腹筋、足底筋、ヒラメ筋)の評価を組織学的に行った。 肺:PPEの気管内投与量が増加するに従って平均肺胞壁間距離がより高値を示しており(対照群<PPE 0.025U群<PPE 0.1U群)、肺の気腫化が顕著であった。各群において有意な体重減少はなく、最も肺気腫が著明であったPPE 0.1U群と対照群の2群で、骨や筋肉の変化を比較した。 脊椎・下肢骨:DXA法で測定した脊椎の骨密度は、PPE 0.1U群で有意に低値を示した(大腿骨の骨密度の値はPPE 0.1U群で低い傾向であった)。骨形態計測による評価では、脊椎・下肢骨ともに海綿骨量の有意な減少および骨形成能(類骨面、石灰化面、石灰化速度、骨形成速度)の有意な低下を認めた。 血液:血漿中の骨形成マーカー(Osteocalcin)および骨吸収マーカー(TRACP-5b)の値はそれぞれPPE 0.1U群で低い傾向にあり、COPDモデルマウスの骨代謝動態は低回転型を示すことが示唆された。 下肢筋:PPE 0.1U群のヒラメ筋重量が対照群よりも減少していた。ヒラメ筋の筋繊維のほとんどは遅筋であり、4種類の筋繊維(1型、2A型、2D/X型、2B型)の中で1型筋繊維と言われている。本研究では、この4種類の筋繊維を免疫染色で判別可能にして組織学的な評価を行った。PPE 0.1U群では、1型筋繊維の占める割合が有意に低下しており、ヒラメ筋の重量減少は遅筋(1型筋繊維)の萎縮に伴うものであることが示唆された。 現在、本研究成果を基に学術論文を作成中である。COPD骨粗鬆症の病態メカニズム解明に向けて今後このモデル動物を用いて研究を続けていく予定である。
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