申請研究の目的は,市町村の教育予算編成過程における地方交付税制度の水準維持機能の態様を明らかにすることである。29年度は,地方交付税制度に関する資料の分析を中心に,質問紙調査の企画・設計,調査実施,データ整理を行った。調査実施が遅れたため,成果公表については,30年度以降に行うこととなった。 29年度の調査は,平成30年度の市町村予算編成に関するアンケート調査として,基礎自治体の予算編成プロセスや担当者が何を参照して予算原案を作成しているのか。また,各自治体の予算編成方式はどのようになっているのか。地方交付税制度はそこにおいてどのように認識されているのかを調査した。 地方交付税の種地別に,政令市を除く市町村を対象として800強の質問紙を配付し,30%程度の回収率であった。 結果は,ほとんどの自治体(教育委員会)では,予算編成に際して地方交付税制度が認識されておらず,また交付税措置された費目の中では特にICT関連予算が不足していると認識していることがわかった。。 これは教育委員会レベルにおいて地方交付税制度が直接的に予算編成を拘束する物ではないことを意味しており,地方交付税制度の趣旨からすれば当然の帰結である一方で,教育財源の保障という意味では,近年の一般財源化を志向した教育財政改革が財源保障にとって極めて脆弱である可能性を示唆している。 他方で,教育委員会レベルにおいて認知されていない(意識されていない)だけであって,別のフェーズにおいて影響する可能性は残されている。たとえば,学校レベルでのヒアリングや財務担当部局の予算折衝において予算を検討する際の基準として機能する可能性は十分にある。今後はこの点について調査を進めていきたい。
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