研究課題/領域番号 |
16H07397
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研究機関 | 函館工業高等専門学校 |
研究代表者 |
須藤 絢 函館工業高等専門学校, 一般人文系, 特命助教 (90780693)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 数学教育協力 / 国際協力 / 認知言語学 / メタファー / 正負の数 |
研究実績の概要 |
数学的概念の中には、実際の事象や経験を例えに用いることが非常に重要な単元がある。しかしながら、数学学力の向上が喫緊の課題となっている開発途上国の環境や生活には、われわれが一般的に用いている例えが乏しい場合がある。本研究は、この「例え」が機能していないことが開発途上国の低い数学学力の原因の1つではないかと考え、概念体系の本質はメタファーによって成り立っているという認知言語学的視座を取りいれ、「例え」と計算技能の関係を明らかにするものである。 平成28年度においては、調査紙の作成のため広島大学国際協力研究科を訪問し各国の教科書やシラバスを分析した。また、研究のブラッシュアップのための学会発表を1回、研究会での発表を1回行った。その後、ザンビア共和国(以下ザンビア)とマラウイ共和国(以下マラウイ)での予備調査を行った。予備調査では、ザンビア教育省の協力のもとザンビアルサカ州の中等学校4校、マラウイ教育省の協力のもとマラウイリロングウェ市内の中等学校5校にて調査紙による計算テストとアンケート及び計算技能の習熟度別にインタビューを行った。また、ザンビア、マラウイの現地協力者と今後についての話し合いを行った。ザンビアでは授業研究推進校の現地教員との連携による教授実践を行っていくといった方向性など、本調査への改善案まで議論することができた。マラウイでは、本調査にて調査を行うための学校の特性(いい成績を残す学校やそうでない学校、男子校や女子校など)についての情報を現地協力者と話し合い、予備調査の結果が出たのちスムーズに本調査に移行できる準備を整えることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ザンビア、マラウイでの予備調査は当初の予定よりも順調に行えている。特にザンビアにおいては、ザンビアカリキュラムデベロップセンターの協力により、予備調査結果をもとに現地教員による継続的な教授実践ができることとなった。この協力により、どのような例えを使用することが生徒の計算技能の習熟に結び付くのかを明らかにできる可能性が高くなった。また、マラウイにおいても現地協力者との共同研究を進めていく方向で話し合いが行われている。 しかしながら、当初予定していたタンザニア連合共和国(以下タンザニア)での予備調査が行えなかった。現在、タンザニア・ダルエスサラーム大学と連絡を取り、今後の調査に関しての話し合いをしている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、まず予備調査のデータをまとめZambia Journal of Teacher Professional Growthに投稿予定である。その後、予備調査の結果をもとに調査紙やインタビューの改良を行う。ザンビアにおいては、予備調査のインタビューから「負」や「数」に対する概念が非常に希薄である可能性を現地協力者と議論しており、ザンビアの数学教育における概念に対する教育の欠如に関しての調査を追加して行う予定である。ザンビアにおける研究の進捗状況が非常に順調である現状と、中等学校が学期中であること踏まえ、9月にザンビアにて本調査を行う。その後、本調査の結果をもとに国内外の学会発表を予定している。また、ザンビアで行う本調査の結果がザンビア固有の結果として捉えるものなのか、多言語地域に援用できるものなのかを明らかにするため、3月にマラウイの本調査を実施予定である。一方、平成28年度タンザニアでは予備調査を行えなかったため、話し合いや日程調整を行い9月もしくは3月の本調査に合わせて予備調査を行いたい。
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