本研究の目的は、工業高等専門学校において発話行為のメッセージの「意味」に着目するプレゼンテーションを中心とした授業を開発し、学生のコミュニケーションに対する積極性を高めることである。 本授業実践では,写真とプリントを用いて各単元のまとめでプレゼン活動を行った。これにより,学生は基本的な新出文型や新出単語を発話し,写真を説明することができた。プレゼン活動を行ったあと,10分の制限時間を設け,発表した内容をプリントに書かせた。多くの学生は自分で話したことを書きあげることができた。書かれた内容については単語のスペリングミスや意味を取り違えて使用する場合も見られたが,発話活動としては理解できる内容となっていた。以上のことから流暢さという面では学習効果はかなり見られたが,正確さについては教師からの継続的なフィードバックを行っても学生自ら正確さを求めなければ正しい英文を書くことは容易ではないことが示された。要約すれば,持続発展可能な英語学習を学生ができるようになるには,学習者に内在するメタ認知能力を引き上げるテスト評価の必要性を今回の研究では実感した。 授業観察やアンケート結果を総合すると,英語のプレゼンが総合的に効果のある学習活動であることを示している。特に,プレゼン活動を通して学生が学習者として最も求められる自律した学習者として育っていったことである。プレゼン活動には,学習者個人の独自の活動が多く要求されるため,自律的な取り組みがこの授業活動にもともと含まれている。プレゼン活動をすることで,学習者は他者からの目や質問を意識し,それを鏡にして,自分の発表の仕方の良さや物足りなさに気づき,互恵的に他者への配慮が働いていくのである。プレゼンは発表のために割り当てられた時間的制約に加えて,この他者との関わりを重視した活動であり,それが自律的学習者を育てる大切な要因となっていると思われる。
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