本研究の目的は、『デジタルコンテンツに対する悪意のない改ざんに対して、透かしの頑健性をもって、コンテンツの真正性を主張でき』、『悪意のある改ざんに対しては、透かしの脆さをもって、コンテンツの改ざんの有無と位置を特定できる』電子透かし技術を開発することである。 近年、画像編集ツールの普及により、誰でも画像の構造を簡単に編集できるようになった。そのため、ドライブレコーダや防犯カメラ等で記録されたコンテンツの証拠能力(真正性)が疑問視されている。電子透かし法とは、コンテンツの不正利用を防ぎ、万一、不正利用された場合でも著作権を主張できるようにすることを目的としている。 この目的を達成するため、本年度の計画としては、(1)透かし情報を推定し、改ざん位置を特定して、(2)区間演算が電子透かし法へもたらす効果を解析して、(3)リアルタイムで実現可能な高速アルゴリズムの開発を行うという、3点を挙げた。 結果として、透かし入りコンテンツから改ざんを検知する過程で、『透かし入りコンテンツ以外の情報を必要としない電子透かし法を開発した。また、区間演算の高速化技法により、これまでと同等の性能を有する電子透かしの埋め込みを実現した。これにより、当初計画の(1)~(3)をすべて達成した。さらに、上記で得た知見を基に、ウェーブレット変換とフラクタル次元を組み合わせて、コンピュータ支援診断向け内視鏡画像からの早期食道癌の検出法も開発した。 今後は、これらの結果を活用して、医用画像のなどの個人情報の保護、デジタルコンテンツに関わる著作権侵害の抑止ができる完全復元可能な改ざん検知付き電子透かし法へ拡張する。
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