本研究は、大名華族家で作成・取得された文書群の構造分析等を行うアーカイブズ資源研究である。大名華族家伝来の文書群の全体構造をアーカイブズ学的視点から明らかにすることで大名華族の各活動の有機的関係を明らかにすることを目指す。特に、「下総佐倉 堀田家文書」(公益財団法人日産厚生会佐倉厚生園病院所蔵、佐倉市寄託)を主な調査対象として他家との比較を適宜実施する。 最終年度にあたる2017年度は、佐倉市において「下総佐倉 堀田家文書」の調査を合計12回実施した。具体的な作業は、前年度に引き続き既存の目録との照合作業及び研究に必要な文書の撮影等である。また、他家との比較を行うため、旧久留里藩黒田家文書、旧松代藩主真田家文書などの調査も適宜行った。 当該年度は、調査によって蓄積されたデータ・資料を分析する作業に力を入れた。とりわけ堀田家の活動を支えた堀田家家務所の組織構造と文書の作成・収受・保管等の実態解明に力をさいた。堀田家家務所は、堀田伯爵家の家令・家扶・家職といった家政を取り仕切る役職からなる集合体であり、同家の心臓部分ともいえる組織である。検討の結果、堀田家家務所の組織と活動および記録管理のあり方がおおむね明らかとなり、文書群の全体構造を把握できた。 以上の研究活動の結果得られた成果をまとめて学術論文を発表することができた。また、成果を市民にも還元すべく、佐倉市と共催で佐倉・城下町 400 年事業の一環としてシンポジウムを開催し、行政・市民とともに地域にとっての記録の役割・意義を考える場を設けた。なお、「下総佐倉 堀田家文書」の目録については、公表に向けて修正・補填作業に鋭意取り組んでいるところである。
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