研究課題/領域番号 |
16H07410
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
安東 遼一 国立情報学研究所, コンテンツ科学系, 助教 (50784881)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | コンピューターグラフィックス |
研究実績の概要 |
本研究では、変形格子法によるCGにおける流体シミュレーションの手法の新しいアルゴズムを開発する計画である。変形格子では、従来のアダプティブ格子法と比べ、実装が簡素で、メモリアクセスが単調になるという特徴がある。変形格子自体を用いた計算法は過去に存在するが、時間によって変化する変形格子はこれまでにない。時間によって複雑に変形する流体の形状に応じて、格子を変形し、新しい効率の良い計算法を確立するのが、本研究の目的である。本年度は変形格子での圧力ソルバの開発に注目し、2次精度の境界条件を含む実用的な離散モデルを構築した。具体的には、節点で定義された圧力のポアソン方程式を変形空間で扱えるための変数変換、格子の中を交差する陰関数の点で圧力がゼロとなる境界条件の埋め込み手法を考案した。特に境界条件の設計では、対応する線形ソルバが対称行列となるような拘束条件と、行列の条件数が最適化されるような組み合わせを実現するような、数値モデルを考案した。また格子変形に伴う空間変形に対応した移流方程式を設計し、考案通りに動作することを確認した。格子の変形は、空間上精度が必要な部分で格子が小さくなり、精度が求められない部分で大きな格子を取るような目的関数を湧き出し量としたポアソン方程式を解いて計算できる新たなアルゴリズムを考案した。そして、これらを全て組み合わせ、3次元の液体シミュレーションが動作することを確認した。また、動作プロトタイプは、従来手法に比べ同質なシミュレーション結果を2倍以下の計算コストで生成可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は一通り動作可能なモデルを構築でき、中間結果を得られた。 この結果より、研究計画は予期できない事態の発生可能性がほぼなくなり、遂行を安定して進められると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在格子の変形の制限が認められる。本研究の格子は一様格子を空間変形により得られるものに制限されるため、空間の変形が著しい所で数値誤差が大きくなったり、線形一次方程式の解の計算にて収束が遅れる問題が現れる。そのため、空間の歪みは緩やかである必要があり、結果的に空間アダプティビティを大きく取ることが出来ない。その問題解決のために、根本的に新しい空間変形及び格子生成手法を考案することが求められる。特に、流体シミュレーションでは液体が存在しない部分で計算を省略できるため、その部分については格子の質を良質に保つ必要がない。この原理を利用し、格子の質を必要な部分だけ良質に保てるような新しいアルゴリズムなどの設計を予定している。
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