研究課題/領域番号 |
16H07415
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
荻原 正博 国立天文台, 理論研究部, 特任助教 (90781980)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 惑星形成 / N体計算 / 円盤進化計算 / 原始惑星系円盤 / タイプI移動 / 大気量進化計算 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、最新の理論研究の進展を組み込んだ原始惑星系円盤構造・進化計算、大気構造・進化計算、惑星形成N体計算を行うことで、惑星形成過程の理解を深めることを目的としている。具体的な問題として、密集した軌道で存在している太陽系地球型惑星の起源を説明することや、観測された系外惑星系の軌道分布を再現すること、及び軌道移動している惑星が獲得する大気量の進化を明らかにすることを目標に据えている。 本年度はまず、最新の磁気流体シミュレーションで明らかになった磁気駆動円盤風を考慮してグローバルの円盤の長時間進化を計算するシミュレーションコードを作成した。グローバル円盤進化計算の結果、円盤風の影響を考慮した原始惑星系円盤の進化では、流出する円盤ガスが角運動量を持ち出すことで原始惑星系円盤ガスが中心星方向に降着する現象(円盤風駆動降着)が重要な役割を担うことが明らかになった。この円盤風駆動降着流は、従来考えられていた乱流駆動降着流より高速である可能性があり、円盤中に存在する惑星と周囲のガスの動径方向の速度差が大きくなると考えられる。この場合に、惑星の中心星方向への軌道移動(タイプI移動)はどのような影響を受けるかについて、軌道移動の半解析モデルをN体計算コードに導入することによって調べた。その結果、高速の円盤降着流の影響によって、質量の大きな惑星の中心星への落下が阻害される可能性があることを示した。 本年度は更に、次年度に行う研究の準備として、円盤風の影響下で進化する円盤中での地球型惑星形成を追うシミュレーションコードの作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
円盤風駆動降着流の惑星軌道移動への影響はこれまで認識されておらず、この影響を検討し論文を執筆することに取り組む必要が生じたことで、当初の計画の軽微な変更を余儀なくされた。しかし、円盤風駆動降着流の軌道移動への影響を考察した論文を出版することができており、着実に研究成果をあげることができていると言える。更に、次年度に実行予定である地球型惑星形成シミュレーションコードの作成も完了しており、当初の研究計画の遂行にも問題が無いと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に作成した円盤中での地球型惑星形成過程を追うシミュレーションを実行し、太陽系地球型惑星の密集した軌道の起源を説明する可能性があるかを調べる予定である。また同様の計算コードを用いて、短周期スーパーアース系形成シミュレーションを実行し、観測された軌道分布の再現可能性を議論する予定である。また、軌道移動している惑星が獲得する大気量進化を追う計算も実行する予定である。
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