研究課題/領域番号 |
16H07418
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
大林 龍胆 国立遺伝学研究所, 細胞遺伝研究系, 博士研究員 (90778333)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | DNA複製 / DNAコーミング / 進化 / DnaA |
研究実績の概要 |
原核生物のDNA複製はゲノム上の1箇所(oriC)から複製開始し、その制御はDnaAという複製開始因子に依存した機構が一般的と考えられてきた。しかし、申請者らはラン藻にはDnaAに依存しない複製開始機構を持つ種がいることを、原核生物において初めて明らかにした。また、これらラン藻は複数のDNA複製開始点を持つ可能性も示唆された。さらに、ラン藻が共生し誕生した葉緑体においては、dnaA遺伝子が保存されていないことと系統樹解析の結果より、DnaA非依存型ラン藻が葉緑体の祖先であることを提唱した。しかしDnaA非依存的複製開始機構、またなぜDnaA非依存へと進化したのかは未だに不明である。そこで、本研究では(1) DnaAに依存しない複製開始機構の解明(2)その進化的背景の解明を目的とし、ラン藻と葉緑体ゲノムにおいて解析を行う。 本年度は(1)の計画において、まずは複製開始点の検証を行うため、1分子のDNAにおいて複製をモニターする系(DNAコーミング)の立ち上げを行なった。複製の方向も同時に検出するためIdUとCldUという2種のチミジンアナログを用いてラベルし、それぞれの抗体で染色した結果、顕微鏡下で複製フォークの進行方向も検出することができた。また計画(2)ではdnaA遺伝子が必須でないと考えられるシアノバクテリアにおいて、そのDnaAの機能解析をin vivo、in vitroにおいて検証した。まず初めに精製タンパクを用いてDNA結合能の有無を検証した。さらに、細胞内においてもクロマチン免疫沈降法を用いて、結合能も検証中である。また、dnaA遺伝子が必須であるシアノバクテリアにおいて相補株も作成し、機能の相違を検証している。現在までの結果として、結合能に違いが見られることが分かりつつあり、さらなる詳細な原因を解明中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シアノバクテリア、さらには葉緑体DNAにおいて、DNAコーミングによる解析系を立ち上げることができた。この方法はDNAの複製開始点だけでなく、速度や複製様式まで解析することができるため、今後の計画において基盤技術を確立した。また、種によるDnaAの機能相違も分かりつつあるため、ここから進化的背景が解明できる見込みが見えた。このように本研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
DNAコーミングによる複製開始点や複製様式の検証において、最後に重要になってくるのがゲノム上の位置の可視化である。この課題においてはFluorescence In Situ Hybridization(FISH)法を併用し、解析を進める計画である。また、DnaA依存度の進化的背景に迫るためにも、それぞれの種におけるDnaAの機能解明はこのまま計画通りに進める。さらに、DnaAのアライメント解析により、相違部位などを予測し、キメラタンパク質や部位特異的変異など導入し、詳細な機能の違いを解明する。
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