研究課題
本研究ではプラズマ粒子シミュレーションにジャイロ運動論を適用することで簡約化し、中性ガスとの相互作用を含む核融合炉周辺プラズマ現象の解析に応用することを目指している。国内のほとんどのジャイロ運動論シミュレーション研究では、荷電粒子の分布関数を計算粒子ではなく速度空間上のメッシュを用いて表現しているが、アメリカでは一部の研究グループで粒子法を用いたジャイロ運動論コードが開発されてきている。平成28年12月から三ヶ月間、そのような計算コードの一つであるXGC(X-point included gyrokinetic code)を開発しているプリンストンプラズマ物理研究所のグループのもとに滞在し、初期磁場配位の一般化や核融合科学研究所の大型計算機「プラズマシミュレータ」への最適化を行った。前者については、XGCが従来対象としていたトカマク核融合炉に加えてより強い3次元性を持つヘリカル核融合炉へ対応を進め、後者についてはXGCコードのコア部分(ジャイロ運動論方程式に従って計算粒子の軌道を追跡する部分)のSIMD演算率を向上させ、その結果、理論ピーク性能比で10%を超える実効性能が得られている。XGCは核融合炉全体のシミュレーションを目指しており、電子スケールの現象は近似的に扱っている点で本研究課題とは相違点がある。しかしジャイロ運動論は電子ダイナミクスにもそのまま適用可能であるため、今回得られた知見をもとに、直線装置などを対象とした簡約化ジャイロ運動コードを開発と中性ガスシミュレーションとの結合を進めていくことができると考えている。
2: おおむね順調に進展している
XGCはITER等の大型トカマク装置のシミュレーションで実績があり、計算粒子を用いない他の計算コードとの比較も行われているため、粒子法を用いたジャイロ運動論コードとしては信頼性の高いものである。XGCの開発に寄与することで、ソースプログラムのレベルで理解が進められた点は、本研究課題におけるシミュレーション手法開発の出発点として有用である。一方、プリンストンプラズマ物理研究所への長期出張は、核融合科学研究所のプロジェクト上の目的(XGCのヘリカル核融合炉への適用)もあり、出張中は本研究課題特有の部分(中性ガスに関係する部分など)に対して十分な時間が取れていない面もある。
研究代表者自身の粒子シミュレーションコードについては、導体壁境界条件など新しい要素を追加し、従来のレーザープラズマ関係のシミュレーションだけでなく、球場トカマクの合体(磁気リコネクション)シミュレーションをはじめとした幅広い系に応用できるように整備を進めている。基本的には、このコードにジャイロ運動論による粒子軌道計算部分を追加する予定であるが、XGCを直線装置向けに簡略化し中性ガスのダイナミクスに関係する要素を追加していく可能性もある。XGCの開発チームとも相談の上、本研究課題とXGCの開発とを無理のない形で共存させていけるようにしたいと考えている。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件)
High Energy Density Physics
巻: 22 ページ: 46
https://doi.org/10.1016/j.hedp.2017.02.006
レーザー研究
巻: 44 ページ: 602
Physics of Plasmas
巻: 23 ページ: 053117
http://dx.doi.org/10.1063/1.4952626
The Astrophysical Journal
巻: 828 ページ: 93
https://doi.org/10.3847/0004-637X/828/2/93
Plasma and Fusion Research
巻: 11 ページ: 3401031
http://doi.org/10.1585/pfr.11.3401031