研究課題
本研究計画では、発達初期における自然シーンからの人物認識の発達と、その神経基盤を明らかにする。自然シーンから人物を同定し認識することは、発達初期において非常に重要である。特に、自分に接近する人物や目の前で話している人物が自身に危害を与える人物か否かを識別する必要がある。しかし、会話と接近運動という乳児の発達にとって社会的に重要なシーンから得られる情報を統合し、人物として認識できるかは未検討である。本計画は、顔認知及び人物認知研究の権威であり自然シーンの動画データベースを開発したUniversity of Texas at Dallasと、乳児発達研究の拠点の1つである中央大学の協力のもと実施する。平成28年度は、接近する人物の再認の乳児期の発達を乳児の注視行動を指標とした行動実験から検討し(研究1)、さらに人物認知に重要な顔情報と身体情報が乳児の脳内で機能的に独立に処理されているかを近赤外分光法による脳機能計測から検討を行った(研究2)。現在までのところ、研究1の結果、生後7ヶ月以降で接近する人物の再認が可能となる傾向が示されている。さらに研究2では、側頭領域の前方と後方で、顔情報と身体情報に対する感受性が異なることを示すデータがいくつか得られており、平成29年度も引き続きデータ取得を行っていく予定である。本研究課題に関して、日本基礎心理学会・Society for Research in Child Development 2017 Biennial Meetingで成果発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度に予定していた研究1(行動実験)については、予定していた実験分のデータ取得を終え、当初の計画に追加して統制実験を実施している。研究2(脳活動計測実験)についても、当初の計画通りデータの取得が進んでいる。
研究1に関して、乳児の人物認知の発達についての結果をさらに強化し、よりハイインパクトの海外学術雑誌に投稿するため、当初の計画に追加して統制実験を実施している。平成29年度前半にはデータ取得を終了し、論文投稿を行う予定である。研究2について、平成28年度に引き続き平成29年度もデータ取得を続けていく。今後も、University of Texas at Dallas及び中央大学に滞在しディスカッションを行っていくだけでなく、メールやスカイプなども使用して綿密にディスカッションを行い、研究成果を論文としてまとめていく予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Developmental Science
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10.1111/desc.12498