本研究では、グローバル市場への包摂が進む南アジア都市社会において、従来カーストや民族、及び宗教に規定されると見なされがちであった食肉をめぐる社会関係を文化人類学的に再考することを目的とした。研究方法として、ネパールでカーストに基づく役割として水牛の食肉を扱う「カドギ」の人びとを中心に、南アジアの広い地域で牛、ヤギや鶏の食肉を扱うムスリム、豚や牛の食肉を扱うチベット系民族、そして日本のネパール料理店での社会調査に基き、近年のグローバル市場経済への包摂を背景とした食肉業従事者のカースト間、民族間、宗教間における日常的な交渉のあり方を、経済領域と文化領域を横断しながら民族誌的に描き出した。
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