研究課題
一般的な線量分割方法を用いた外部照射放射線治療は、おおよそ6週間から2か月程度と比較的長期間の治療期間を要し、その間に腫瘍の縮小や体重の減少による大幅な体輪郭の変化が見られる場合がある。特に頭頚部がんの放射線治療では、多くの症例で治療部位周辺の大幅な形態変化が見られる。この治療期間中の体輪郭の変化や患者の状態の変化に適応しながら放射線治療を遂行しようとする適応型放射線治療(Adaptive Radiotherapy)というアプローチがあるが、一方でこれを臨床現場で日常的に施行するには、治療計画の再計画の判断や再計画のタイミングなど未だ課題は多い。本研究では、主に頭頚部がん患者の放射線治療期間中の形態変化に着目し、治療期間の前半の早い時期に形態変化の可能性を把握して治療期間後半の形態変化を予測し、その予測画像を仮想CBCT画像として出力することを最終的な目標とする。平成28年度は以下のことを実施した。(1)毎日の放射線治療の際に撮影される患者位置決め用のコーンビームCT画像を素材として、患者の体輪郭および内部の臓器の変形や移動を変形ベクトル場として抽出するためのDeformable Image Registration ( DIR ) を行うシステムの構築を行った。(2)前項で構築したシステムに関して、DIR手法の選定と、使用するパラメータの最適化を行った。(3)最適パラメータを用いたDIRを5人分の患者データに適用し、すべての患者データにて良好な結果が得られていることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は、患者CBCTデータ取り込みのためのインターフェース部、変形成分を抽出するためのDIR部のシステム構築と、DIRのパラメータ最適化を実施した。これにより患者の変形成分の抽出が可能となった。一方、抽出された変形ベクトル場のPCA解析(主成分分析)を行うシステムの構築については今後の課題である。患者CBCT画像データに関しては継続して収集していく。
平成29年度には、一連のCBCT画像から抽出した変形成分を用いて仮想CBCT画像を作成するため、以下のシステム構築を実施する。(1)毎日のCBCT画像から抽出した一連の変形成分に対して主成分分析を行うシステムの構築(2)前項の結果として得られる主成分ベクトルの上位数個を用いて仮想CBCTを作成するシステムの構築上記2項に加えて、多くの患者データを収集、蓄積し、仮想CBCT画像の精度向上を目指す。
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Japanese Journal of Radiology
巻: 35 ページ: 269-278
10.1007/s11604-017-0630-2