本研究は、戦後兵庫県内4つの市におよそ16年間存在した公立朝鮮学校の設置・存続・移管のプロセスおよびその教育実態を明らかにすることによって、教育の公共性をめぐる議論に対し具体的な史実を提供するとともに、外国人学校の制度保障のあり方を講究していくための手掛かりを探ることを目的とするものである。 2017年度には、①前年度に続き公文書の記録や各学校が所蔵する関連資料の捜索、②兵庫県内に限らない公立朝鮮学校就学経験者および元教員への聞き取り調査、③神奈川県、東京都、愛知県にも存在した公立朝鮮学校との比較を行うための資料調査を、主として実施した。 兵庫県内の東西に幅広く存在した公立朝鮮学校の実態を詳らかにしていくためには、より詳細な調査・研究の実施が求められるものの、東京都や岡山県の場合と異なり、兵庫では公立朝鮮学校の廃止を強制するまでには至らない、地方行政と在日朝鮮人、また地域住民ならびに近隣公立学校と在日朝鮮人との関係性が築かれていたことが、日本教育史に類例をみない公費で運営される外国人学校の存続に大きな影響を与えていたことが明らかになりつつある。 また就学経験者たちの語りからは、これまで公立朝鮮学校について支配的であった語り――すなわちそこでは「本来の民族教育ができない」という否定的な語りとは異なり、かれらがそこでの教育を「民族教育」と認識する一方で、日本人教員とも豊かな人間関係を築いていたことが見て取れた。引き続き、調査を実施していきたい。
|