本研究では、鳥インフルエンザ評価系の構築を見据えた、野生鳥類由来の無限分裂細胞(不死化細胞)の樹立を試みた。本研究では、特に、特定の遺伝子導入による染色体不安定性を回避した不死化細胞の樹立を目指した。これまで、ニワトリを含めた鳥類の不死化細胞の樹立は、数報の自然発生型の不死化細胞のを除き皆無であり、鳥類の不死化細胞の樹立は容易でないことが研究者間の認識になっていた。 本研究では、細胞周期関連遺伝子である変異型CDK4およびCyclinD1、テロメア長の維持のためTERT遺伝子を鳥類細胞において強制発現させて、鳥類由来の不死化細胞の樹立を試みた。このシステムは、共同研究者である国立がん研究センターの清野主任分野長らのグループで開発されたヒト線維芽細胞における不死化細胞樹立法である。細胞周期関連遺伝子であるCDK4やCyclinDは種を超えてアミノ酸配列の保存性が高いことが知られており、鳥類においても有用である可能性が考えられる。 ニワトリおよび数種類の野生鳥類への遺伝子導入の結果、部分的に細胞細胞老化現象を回避できることが明らかになった。さらに、前記の3遺伝子を導入した細胞において、安定して細胞増殖が可能な細胞株を数株取得することに成功した。我々の知る限り、野生鳥類由来の不死化細胞の樹立報告はこれまで得られておらず、極めてユニークな細胞の樹立に成功した。本内容は現在論文投稿中である。 本研究で樹立に成功した鳥類由来の無限分裂細胞を利用することで、鳥インフルエンザ評価系の構築につなげられると期待している。
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