カンボジア・コンポントム州東部では、わずか3年程度の短期間の森林減少が、非木材林産物(NTFP)を採取する住民に負の影響を及ぼす場合がある。そこで、こうした住民に対して、林野行政当局やNGOがとる救済・予防措置を効果的なものとするために、この負の影響を受けやすい住民の居住地の分布を解明した。2014~2016年の間に発生した森林減少により、NTFP採取による現金収入が減った、自家消費量が減ったなどの負の影響を受けた住民がいる村の特徴を一般化線形混合モデル(GLMM)で分析し、村ごとに、影響を受けた住民が居住している確率を予測する手法を開発した。地域で代表的なNTFPである樹脂の採取に着目し、樹脂とその他NTFPの2つのGLMMモデルとした。その結果、林野行政当局やNGOが取るべき救済・予防措置として、新規コミュニティー林の設置、既存コミュニティー林の管理の優先順位付け、パトロール活動への住民の雇用、そしてNTFPのマーケティングを特定した。得られた手法はこれらの措置を早急に必要とする地域の選定基準の開発にも活用されうるものといえる。
本成果の意義は、今まで試みが少ない、短期間(3年間)の森林減少について、NTFP採取で影響を受けた世帯がいる確率が高い村の特徴と地理的分布を解明したことにある。この解明により、林野行政当局やNGOは、そうした村への応急的な救済・予防措置を行政区界ごとに現場の実態に合わせ検討できる。これは、影響を受けた住民がその影響を緩和するために更に森林減少に加担するという短期的な悪循環を断ち切るためにも重要な知見である。
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