研究実績の概要 |
様々な組成のホイスラー合金の単結晶薄膜および多結晶薄膜を用いて、面直電流巨大磁気抵抗(CPP-GMR)素子を作製し、合金組成、薄膜の微細構造と磁気抵抗(MR)出力の関連を調査した。その結果、300Cのアニール温度において、Co2(Mn,Fe)Ge合金が多結晶薄膜において最大のMR出力を示すことが確認された。X線回折や放射光を用いた異常分散X線回折により多結晶Co2(Mn,Fe)Geの規則構造を評価した。結晶下地層の上のCo2(Mn,Fe)Ge膜はB2規則であり、その規則度はせいぜい50%であることがわかった。次に、他グループによって報告されている、極薄CoFeBTa下地層挿入によるCPP-GMRの増大メカニズムについて調査した。アモルファスCoFeBTa下地上にCo2(Mn,Fe)Ge膜を作製することにより、MR変化量が30%増大するが、その際にB2規則度がCoFeBTaを挿入しない場合の規則度50%に対し、CoFeBTa挿入によって規則度が75%まで改善されることによる効果であることがわかった。これはアモルファス上に作製されたホイスラー合金膜がナノ結晶状態からアニールにより配向多結晶に再結晶する際に、規則化が進展する効果によるものだと考えられる。以上の結果は300Cアニールにおけるものであるが、アニール温度を400Cに上げるとむしろMR変化量が低下する、この時B2規則度も低下する。この理由は現在不明であるが、さらなる高MRの実現のために解決すべき課題である。
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